その痛み、続けていい?休むべき?サッカー選手のための「痛みの見分け方」

身体の痛み

1. はじめに

練習中に痛みが出たとき、こんなことを考えたことはありませんか?

「これ、続けていいのかな…」
「休んだら遅れをとりそう…」
「でも、なんか嫌な感じがする…」

痛みがあるとき、続けるべきか休むべきかの判断はとても難しいです。でも、痛みの種類を知っていれば、その判断がぐっとしやすくなります。

この記事では、体の中で何が起きているかを感覚に紐づけながら、「この痛みはどっちだ?」と自分で判断できるようになるための知識を解説します。


2. 痛みには大きく2種類ある

まず大前提として、痛みには急性痛慢性痛の2種類があります。

⚡ 急性痛

捻挫した瞬間・筋肉を傷めた直後など、組織にはっきりダメージが起きているときの痛み。

体が「今すぐ動くな!」と警告しているサインです。この痛みは基本的に無視してはいけません。

🔄 慢性痛

組織の損傷はすでに治っているのに、痛みだけが残り続けている状態。

「なんとなくずっと痛い」「怪我してから数ヶ月経つのに…」という場合はこちらに近いです。神経・脳レベルでの変化が関わっています。

サッカー選手が「続けていいか」で悩むのは主に急性痛のときです。ここを正しく判断できるようになることが大切です。


3. 痛みの「感覚」で種類がわかる

痛みを伝える神経には大きく2種類あります。その神経の違いで、感じ方がまったく違います。

① ズキッとする痛み

「ズキッ」「鋭い」「すぐ来る」

この痛みはAδ(エーデルタ)線維という神経が伝えます。ミエリンという絶縁体に覆われた有髄神経で、伝達速度が速い(5〜15m/秒)のが特徴。

捻挫の瞬間・足を踏まれた瞬間などに感じる、鋭くて即座の痛みです。「一次痛」とも呼ばれます。

感覚のイメージ:足首を捻った瞬間に走る「ズキッ!」という鋭い痛み。針で刺されたような感覚。反射的に足を引っ込めたくなる痛み。

② ジンジン・ズーンとする痛み

「ジンジン」「ズーン」「じわじわ来る」

こちらはC線維という神経が伝えます。ミエリンのない無髄神経で、伝達速度が遅い(0.2〜2m/秒)のが特徴。

ズキッとした後に続いてくる、鈍くて持続する痛みです。「二次痛」とも呼ばれます。

感覚のイメージ:捻挫してから数秒後にじわじわ広がってくる「ズーン」とした痛み。熱を持ってくる感じ。「あー、やっちゃったな」と気づく痛み。


4. 「やばい痛み」と「そうじゃない痛み」の見分け方

では実際に、練習中の痛みをどう判断すればいいか。以下のポイントで考えてみましょう。

🚨 すぐに止まるべき痛みのサイン

  • 「バキッ」「ブチッ」など音や衝撃を伴う痛み
  • 体重をかけられない・足をつけない
  • 急激な腫れや内出血が出てきた
  • 感覚がおかしい・しびれがある
  • ズキッとした後、痛みが引かずにどんどん強くなる

→ 組織に明らかなダメージが起きているサインです。すぐに練習を止めてトレーナーや医療機関に相談しましょう。

⚠️ 様子を見ながら判断が必要な痛み

  • 動いていると気にならないが、止まると痛い
  • ウォームアップで消える痛み(ただし慢性化注意)
  • 「いつもの筋肉痛」と区別がつかない痛み
  • 以前に怪我した部位が「また来たかも」という感覚

→ 一人で判断せず、トレーナーや監督に正直に伝えるのが最善です。


5. 不安や恐怖で、痛みは本当に強くなる

「気のせいだ」「弱気になるな」と言われることがあります。でも、これは気のせいではなく、脳の仕組みによるものです。

痛みの信号は、脳に届いてから単純に「痛い」と感じるだけではありません。そのとき持っている感情・不安・過去の記憶が一緒に処理されます。

  • 「また怪我するかも」という不安 → 痛みが増幅される
  • 「試合に出られなくなる」という恐怖 → 感覚が敏感になる
  • 「前回の怪我が最悪だった」という記憶 → 同じ部位の痛みが強く感じられる
不安・恐怖が脳で痛みを増幅させる仕組み
不安・恐怖が脳で痛みを増幅させる仕組み

これが「慢性痛」が長引く理由のひとつです。組織の損傷が治っても、痛みの記憶と不安が残ると、脳が過敏に反応し続けます。怪我から復帰した後も「怖くて踏み込めない」という感覚も、この仕組みで説明できます。


6. 気持ちで痛みを和らげることもできる

逆に言えば、心の状態が整うと痛みは和らぎます。これも「気合」ではなく、体の仕組みです。

脳には「下行性疼痛抑制系」という痛みを抑えるシステムがあります。集中しているとき・ゾーンに入っているとき・仲間と一緒に盛り上がっているとき、このシステムが働いて痛みが気にならなくなります。

試合中は痛みを感じにくいのに、終わった途端に「あ、痛い」となるのはこれが理由です。

注意:これは「試合中は無理してOK」という意味ではありません。このシステムによって痛みが隠れているだけで、組織のダメージは着実に進んでいることがあります。試合後に急に悪化するケースもこのためです。


7. まとめ:自分の痛みに「名前をつける」習慣を

  • 痛みには急性痛(今起きているダメージ)慢性痛(神経・脳レベルの変化)がある
  • ズキッとする鋭い痛みは即座の警告サイン。ジンジンする鈍い痛みはダメージが続いているサイン
  • 「バキッ」「腫れ」「体重をかけられない」はすぐに止まるべき痛みのサイン
  • 不安や恐怖は痛みを本当に増幅させる。それは弱さではなく脳の仕組み
  • 試合中は痛みが隠れやすい。終わった後に悪化するケースに注意

「なんか痛い」で終わらせず、「どんな痛みか」「いつから」「どのくらい」を言語化する習慣をつけましょう。それがトレーナーや医療機関への正確な情報になり、正しい判断につながります。

痛みに悩んでいる選手は、ぜひ気軽にご相談ください。


著者プロフィール
柔道整復師 / サッカーチームトレーナー
高校サッカー選手のコンディショニング・怪我の予防・パフォーマンス向上をサポートしています。
Instagram: @soccer_karada_lab


この記事で参考にした本

ペインリハビリテーション入門 表紙

沖田実・松原貴子 著
ペインリハビリテーション 入門

痛みのメカニズム(急性痛・慢性痛・神経の仕組み)をわかりやすく解説した専門書です。痛みについてもっと深く知りたい方におすすめです。

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