1. はじめに — 「速くなりたい」だけでは速くならない
「もっと速くなりたい。」
「最初の一歩が遅い気がする。」
「相手に置いていかれることが多い。」
サッカー選手なら一度は感じたことがあるはずです。
速くなるためにとにかく走り込む選手は多いですが、走り込みだけでは加速力はなかなか上がりません。 加速力を高めるには、「速く走れる体」をつくることと同時に、正しい力の使い方=技術が必要だからです。
今回紹介するのが、チューブレジステッドスプリントというトレーニングです。現場で実際に使っている方法を、なぜ効果があるのかの根拠も含めて解説します。
2. 加速に必要なのは「水平の力」
まず大前提として、なぜ加速力が上がらないのかを理解しておくことが大切です。
加速フェーズでの力の方向
スプリントには大きく2つのフェーズがあります。
| フェーズ | 特徴 | 求められる力の方向 |
|---|---|---|
| 加速初期(スタート〜約20m) | 前傾姿勢で推進力を生む | 水平方向への力が重要 |
| 最大速度局面(20m以降) | 体を立てて高いピッチを維持 | 垂直方向の力も加わる |
加速初期で大切なのは、地面を後ろに押す「水平の力」です。垂直方向(地面を真下に踏む力)だけでは前に進めません。

▲ 加速初期は前傾を保ちながら水平方向に力を発揮する

▲ 加速後期〜最大速度局面では体を起こしてピッチを上げる
Pawing(ポーイング)動作とは
もう一つのキーワードが Pawing(ポーイング) です。
Pawingとは、脚を前に振り出してから後ろに引っかくように地面に着地する動作のことです。猫が地面をひっかくような動きをイメージするとわかりやすいです。
なぜPawingが大事なのか?
この動作によって、接地の瞬間に水平方向の力が生まれ、前への推進力に変換されます。逆に脚を前に出したまま「ブレーキをかけるように」着地すると、せっかくの勢いが止まってしまいます。
3. チューブレジステッドスプリントとは
トレーニングの概要
チューブレジステッドスプリントは、ゴムチューブ(レジスタンスバンド)を腰に巻き、パートナーに後ろから引っ張ってもらいながらスプリントを行うトレーニングです。
チューブによる後方抵抗がかかることで、身体は自然と以下の状態になります。
- 前傾姿勢を保たざるを得ない(後ろに引っ張られるため、自然と体が前傾する)
- 水平方向に強く地面を押すように脚を使う
- Pawing動作が引き出されやすくなる
つまり、正しい加速フォームを「強制的に体に覚えさせる」ことができるのが最大の特徴です。

▲ チューブをつけた状態でのスプリント。前傾姿勢が自然に引き出される
4. 実際のトレーニング方法
必要なもの
- レジスタンスバンド(ゴムチューブ)1本
- パートナー1名
- 20〜30mの直線スペース
3ステップのやり方

▲ ①トレーニング前 ②チューブトレーニング中 ③トレーニング後
STEP 1
トレーニング前(フォーム確認)
まずチューブなしで軽くスプリントし、現時点の加速フォームを確認します。自分のスタート時の姿勢・脚の動かし方を意識しておきましょう。
STEP 2
チューブトレーニング中
チューブを腰に巻き、パートナーが後ろから両手で持ちます。スタートの合図でスプリント開始。パートナーは一定の抵抗をかけながら後退します。
- 距離:15〜20m
- 本数:3〜5本
- 意識すること:前傾姿勢・地面を後ろに押し出す感覚
STEP 3
トレーニング後(フリースプリント)
チューブを外してすぐにフリースプリントを行います。チューブで体に覚えさせた感覚を、抵抗なしで再現することが目的です。「さっきより速い感じがする」という体感が得られることが多いです。
5. 現場で感じる効果
実際に選手たちに行ってみると、チューブありとチューブなしでのスプリントを比べたとき、以下のような変化がみられます。
前傾がキープしやすくなる
チューブの抵抗があると、後ろに引っ張られないよう自然と体が前傾します。チューブを外した後もその感覚が残りやすく、加速初期のフォームが改善しやすくなります。
一歩目が変わる
水平方向に地面を押す感覚が身につくことで、スタートの一歩目から推進力が生まれやすくなります。「止まった状態からの出足」が課題の選手に特に効果を感じます。
すぐに体感できる
「チューブありの後にチューブなしで走ったら速く感じた」という選手の声は多いです。感覚的なフィードバックが得やすいのがこのトレーニングの利点で、モチベーションにも繋がりやすいです。
6. 注意点
⚠ 抵抗が強すぎると逆効果
チューブの張力が強すぎると、前傾しすぎて正しいフォームが崩れます。フォームが崩れない範囲の抵抗量に調整してください。目安は「少し引っ張られるな」と感じる程度です。
⚠ 疲労時は避ける
神経系を使うトレーニングのため、練習の最初(ウォームアップ後)に行うのがベストです。疲れた状態では正しいフォームが維持できず、効果が半減します。
⚠ 痛みがあるときは中止
腰・股関節・膝に痛みがある場合は無理に行わないでください。痛みの原因を先に解決することが優先です。
7. まとめ
- 加速初期に必要なのは水平方向への力発揮
- チューブの抵抗が前傾姿勢・Pawing動作を自然に引き出す
- 必要なのはチューブ1本とパートナー1名だけ
- トレーニング後すぐにフリースプリントで感覚を定着させる
- 抵抗が強すぎず、疲労時を避けることが大切
チューブレジステッドスプリントは、器具がシンプルで現場でもすぐ取り入れられるにもかかわらず、加速に必要な水平力発揮・前傾姿勢・Pawing動作を効率よく習得できる優れたトレーニングです。
「走り込んでいるのに加速が変わらない」という選手は、力の方向を見直すことが突破口になるかもしれません。ぜひ取り入れてみてください。
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著者プロフィール
柔道整復師 / サッカーチームトレーナー
高校サッカー選手のコンディショニング・怪我の予防・パフォーマンス向上をサポートしています。
Instagram: @soccer_karada_lab
※本記事の内容はトレーニング情報の提供を目的としています。痛みや怪我がある場合は、医療機関または専門家にご相談ください。

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