夏のサッカーで一番怖いのは、ケガよりも熱中症かもしれません。気温が上がるこの時期、「いつも通り頑張らせていいの?」「どこで休ませるべき?」と迷う保護者・指導者の方は多いはずです。サッカー現場で13年、選手のコンディションを見てきた経験から、倒れる前のサインの見分け方と、今日からできる予防法をまとめました。
なぜサッカー選手は熱中症になりやすいのか
サッカーは、炎天下のグラウンドで90分近く走り続ける競技です。地面に近いほど照り返しで体感温度は上がり、ピッチ上は気温+5〜10℃になることも珍しくありません。さらに試合中は夢中になって、のどの渇きや疲れのサインを自分で見逃しがちです。
特に成長期の選手は、大人より体温調節が未熟で汗もかきにくいため、体に熱がこもりやすい。「若いから大丈夫」はむしろ逆で、子どもほど注意が必要です。
💡 ここがポイント熱中症は「真夏のピーク」だけでなく、体がまだ暑さに慣れていない6〜7月の初めにこそ起こりやすい。梅雨明け直後の蒸し暑い日は特に要注意です。
倒れる前のサイン|この症状が出たら即ストップ
熱中症は段階的に進みます。早い段階で気づいて対応すれば、重症化はほぼ防げます。次のサインを覚えておいてください。
| 段階 | サイン | 対応 |
|---|---|---|
| 軽い(注意) | 大量の汗・のどの渇き・少しのめまい・足がつる | 日陰で休む・水分と塩分を補給 |
| 中等度(危険) | 頭痛・吐き気・体がだるい・集中力が切れる | プレー中止・体を冷やす・誰かが付き添う |
| 重症(緊急) | 反応が鈍い・まっすぐ歩けない・汗が止まる・意識がもうろう | すぐ救急車・全身を冷やしながら待つ |
⚠️ 一番危険なサイン「あんなに汗をかいていたのに、急に汗が止まった」——これは体温調節が限界を超えたサインで、最も危険な状態です。迷わず救急要請してください。
今日からできる熱中症対策【5つ】
① 「のどが渇く前」に飲む
のどの渇きを感じた時点で、すでに軽い脱水です。15〜20分ごとにひと口ずつ、こまめに飲むのが鉄則。試合・練習前にもコップ1〜2杯を先に入れておきましょう。
② 水だけでなく「塩分」も一緒に
大量に汗をかくと、水分と一緒に塩分(ナトリウム)も失われます。水だけを大量に飲むとかえって体調を崩すことも。経口補水液や塩タブレットで塩分を補うのが効果的です。
③ 体を「外から冷やす」
首・わきの下・足の付け根には太い血管が通っています。ここを冷やすと効率よく体温が下がります。アイスバッグや冷却タオルをハーフタイムに当てるだけでも違います。
④ 暑さに体を「慣れさせる」(暑熱順化)
急に暑い中で全力を出すと体がついていきません。シーズン前から徐々に運動量を上げて、汗をかける体を作っておくこと。これを暑熱順化といい、2週間ほどで体が暑さに適応します。
⑤ 睡眠・朝ごはんを抜かない
寝不足や朝食抜きの状態は、それだけで熱中症リスクが跳ね上がります。試合当日のコンディションは前日から始まっています。
⑥ 「手のひら」を冷やす(最新の知見)
近年の研究で、手のひらを冷やすと効率よく深部体温(体の中心の温度)を下げられることがわかってきました。手のひら・足の裏・ほおにはAVA(動静脈吻合)という特殊な血管があり、体温が上がるとここが開いて、冷やされた血液を一気に体へ戻してくれます。スタンフォード大学の研究グループが解明した仕組みで、運動中の手のひら冷却がパフォーマンス維持に役立つことが複数の研究で示されています。
やり方はかんたん。ハーフタイムや給水のときに、冷たいペットボトルやアイスバッグを”握る”だけ。冷やしすぎると逆に血管が閉じてしまうため、8〜22℃くらい(冷たすぎない冷たさ)がポイントです。
⚠️ 手のひら冷却は「プレー中・休憩中に体温を下げて予防する」ための方法です。重症の熱中症の応急処置では、首・わき・足の付け根+全身を冷やすのが基本。緊急時はこちらを優先してください。
✅ 保護者・指導者のチェックリスト
- 飲み物は「水+塩分」を用意したか
- 日陰・休憩できる場所は確保したか
- 冷却グッズ(氷・冷たいタオル)はあるか
- 前日の睡眠・当日の朝食はとれているか
- 「しんどい」と言える雰囲気を作れているか
「我慢」が一番危険|休む勇気を持たせる
サッカーをする子は真面目で頑張り屋が多いぶん、「迷惑をかけたくない」「交代したくない」と無理をしがちです。でも熱中症は、我慢して進むほど一気に重くなります。
「しんどかったらすぐ言っていい」——この一言を大人が伝えておくだけで、最悪の事態は防げます。休むのは弱さではなく、長くプレーを続けるための判断です。これはケガの予防とまったく同じ考え方です。
備えておきたいもの
特別なものは要りません。現場でもよく使われている、手に入れやすいものを用意しておくだけで安心です。
- 経口補水液 … 汗で失った水分と塩分をすばやく補給。軽い脱水を感じたときの定番
- 塩分タブレット … 練習中でもサッと口に入れられる。かばんに常備しておくと便利
- 冷却タオル・アイスバッグ … 首やわきを冷やして体温を下げる。ハーフタイムにあると心強い

まとめ
- サッカー選手はピッチ上の高温+夢中になることで熱中症リスクが高い
- 体が慣れていない6〜7月初めこそ要注意
- 「汗が止まる・反応が鈍い」は緊急サイン。迷わず救急要請
- のどが渇く前にこまめに、水+塩分で補給する
- ハーフタイムは「手のひら」を握って冷やすと体温が下がりやすい
- 「しんどい」と言える雰囲気づくりが、最大の予防になる
暑さに負けず、夏も元気にプレーを続けられるように。気になる症状や体のメンテナンスについては、お気軽にご相談ください。
参考文献
- NSCAジャパン「手のひら冷却で深部体温ダウン!夏場のパフォーマンス向上法」
https://park.nsca-japan.or.jp/category-13/post-3745/ - NSCA「手のひらの冷却:深部体温とレジスタンストレーニングへの影響」
https://www.nsca-hpc.jp/columns/20190731/ - Effects of palm cooling on thermoregulatory-related and subjective indicators during exercise in a hot environment(ScienceDirect, 2024)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0306456524000214

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