「練習ではあれだけダッシュを繰り返しているのに、試合になると思うように走れない」
高校サッカーの現場で選手を見ていると、こういうケースに出会うことがあります。フィジカルテストでは悪くないのに、試合でスプリントが決まらない選手です。
その原因のひとつとして、私が最近注目しているのが「カーブスプリント」です。
練習では直線のダッシュをひたすら繰り返すのに、実際の試合でまっすぐ走る場面はほとんどありません。ほぼすべてのスプリントがカーブしています。それなのに、カーブスプリントの練習はほぼゼロ──これが「試合で走れない」につながっている可能性があります。
この記事では、カーブスプリントとは何か、なぜ重要なのか、そして現場で使えるトレーニングを紹介します。
試合中のスプリントは、ほぼカーブしている
サッカーの試合中、選手はどれくらいの頻度でカーブスプリントをしているのでしょうか。
ユース年代のサッカー選手を対象にした研究では、試合中のスプリントは平均して約5°のカーブ角度で行われており、最大では30°にもなることが報告されています1。
📊 試合中のスプリント実態
- ほとんどのスプリントが直線ではなくカーブしている
- 平均カーブ角度:約5°
- 最大カーブ角度:30°
- サッカー・バスケ・ラグビーなど多くのスポーツで同様の傾向
考えてみれば当然です。ドリブルで相手を抜く、スペースに走り込む、ボールに合わせてコースを変える──これらはすべてカーブしたスプリントです。まっすぐ走るのは、ほぼロングカウンターくらいでしょうか。
それなのに多くのチームのフィジカルトレーニングは、直線ダッシュ・コーンを使った方向転換が中心です。試合で頻発する動作が、練習では再現されていないのです。
カーブスプリントは、直線スプリントとは「別の能力」
「直線のスプリントが速ければ、カーブも速いんじゃないの?」と思うかもしれません。
スペインのセミプロリーグに所属するサッカー選手40名を対象にした研究で、こんな結果が出ています2。
直線が速い選手はカーブも速い傾向はあります。でも、カーブスプリントの速さのうち、直線の速さで説明できるのはたった35%だったのです。
もう少しわかりやすく言うと──
💡 イメージで理解する
「カーブが速い選手10人」がいたとして、
そのうち3〜4人は「直線が速いから」説明できる。
でも残りの6〜7人は、直線の速さとは別の理由でカーブが速い。
つまり「直線が速いからカーブも大丈夫」とはならない。
カーブには直線とは別の能力が必要ということです。
苦手な方向がパフォーマンスを下げる
さらに興味深いのが「左右差」の問題です。カーブスプリントには右方向と左方向があり、得意な側と苦手な側が生まれます。
同研究グループの別の研究(対象9名)によると、苦手な側へのカーブスプリントタイムは直線スプリントタイムと有意な差があった(つまり苦手側は遅い)と報告されています3。
試合では左右どちらの方向にもカーブスプリントが要求されます。苦手な方向が制限要因になっている可能性があり、そこを改善できれば総合的なスプリント能力が上がると考えられます。
カーブスプリントの特徴と怪我リスク(トレーナーの視点)
ここからは、柔道整復師・サッカートレーナーとして現場で見てきた視点を加えます。
カーブスプリントには直線スプリントにはない身体的な特徴があります3。
| 部位 | カーブスプリントでの特徴 |
|---|---|
| 内側の足 | 接地時間が外側の足より長くなる |
| 内側の脚の筋肉 | 内転筋・半腱様筋の活動が増加 |
| 外側の脚の筋肉 | 中臀筋・大腿二頭筋の活動が増加 |
「接地時間が長い」が怪我につながる
内側の足の接地時間が長くなるということは、短時間で大きな力を発揮できていないことを意味します。地面を押す時間が長くなるということは、それだけ足首や膝への負担が長く続くということでもあります。
⚠️ 怪我リスクの観点から
- カーブ時は内側の足首・膝への負担が増大する
- 直線練習だけだと、試合で使う筋肉の準備ができていない状態になる
- 準備できていない筋肉・関節に急激な負荷がかかると怪我につながりやすい
🏃 現場での気づき
高校サッカーの試合帯同をしていると、足首捻挫や膝の怪我はカーブしながらスプリントした瞬間に起きることが少なくありません。直線の練習では再現されない負荷が、試合の一瞬に集中してかかっている感覚があります。
カーブスプリントを練習に取り入れることは、パフォーマンス向上だけでなく怪我の予防にもつながると考えています。

▲ 実際のカーブスプリントトレーニング(約35m)の練習風景
現場で使えるカーブスプリントトレーニング
カーブスプリントは大きく2種類に分けられます。
| 種類 | 特徴 | 活用場面 |
|---|---|---|
| ① 角度急・低速タイプ | 身体コントロール重視・スピードは抑える | ウォーミングアップ |
| ② 角度緩・高速タイプ | 最大速度に近いスプリントでカーブ | スプリントセッション |
① ウォーミングアップに使えるカーブスプリント
コーンを曲線状に配置して、緩やかなスピードでカーブを意識しながら走ります。速さよりも体の傾きや内側の脚の使い方を意識することが大切です。
実施のポイント
- 左右どちらの方向にも実施する(左右差をなくすため)
- 内側の足でしっかり地面を押す感覚を意識する
- スピードは70〜80%程度でOK
② スプリントセッションに使えるカーブスプリント
より実戦に近い形で使う場合は、40m程度の距離をカーブしながら走り、選手が最大速度に近いスピードを出せるように設定します。
🏃 私が実際に試したメニュー
シュートコンビネーション型:
スタートから緩やかにカーブしながらスプリント → ゴール前でシュート。2名を競争させて遅かった方が守備対応。ゲーム要素を入れることで選手の本気度も上がります。
35mカーブスプリント型:
コーンを曲線状に配置して約35mのカーブコースを作り、最大スピードに近い強度でスプリントします。上の写真のようにコーンを弧状に並べるだけで簡単にセットアップできます。左右どちらの方向にも実施することで、得意・不得意の差を埋めていきます。
注意点
カーブスプリントは直線スプリントより身体への負荷が大きくなる場合があります。最初は低速から始め、慣れてきたらスピードを上げていきましょう。
まとめ
📝 この記事のポイント
- 試合中のスプリントは直線よりカーブが圧倒的に多い
- カーブスプリントと直線スプリントは独立した別の能力
- 苦手な方向のカーブがパフォーマンスを制限している可能性がある
- カーブ時は内側の足への負荷が増大 → 怪我リスクにも関係する
- ウォーミングアップに少し取り入れるだけでも効果が期待できる
- 左右両方向で実施することが重要
毎回のトレーニングで大きな時間を割く必要はありません。ウォーミングアップの中に少しカーブを意識した走りを取り入れる、スプリントセッションで月に数回カーブスプリントを加えてみる──そのくらいのペースで十分です。
試合で本当に走れる選手を育てるために、ぜひカーブスプリントを練習に組み込んでみてください^^
参考文献
- Loturco I, et al. Curve sprinting in soccer: relationship with linear sprints and vertical jump performance. Biology of Sport. 2020;37(3):277-283.
- Fílter A, et al. New curve sprint test for soccer players: Reliability and relationship with linear sprint. Journal of Sports Sciences. 2020;38(11-12):1320-1325.
- Filter A, et al. Curve Sprinting in Soccer: Kinematic and Neuromuscular Analysis. International Journal of Sports Medicine. 2020;41(11):744-750.

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